風味を長続きさせる方法
前回書いたように、焙煎したコーヒー豆の風味成分は、だいたいが揮発性の有機化合物でした。
要するに芳香のもとというわけです。
ということは、温度の上昇や時間の経過とともに、コーヒーの液体から蒸発・気化してどんどん失われてしまうということになります。
いや、豆を挽いたときから、もっといえば、焙煎したときから、豊潤な芳香の有機化合物は揮発してどんどん減っていくことになります。とはいえ、熱水で淹れると、そういう有機化合物が水に滲出し溶け出るので、淹れたあとの減り方の方がずっと急速になるのですが。
とりわけ風味を落とすのは、淹れたのちの液体の温度による揮発と酸化です。
いずれにせよ、コーヒーの風味を楽しむためには、豆を焙煎して挽いてから煮出すまで、そして煮出してから、飲むまでの時間をできるかぎり短くする必要があるのです。煎る前の生豆だって、中身の成分が劣化・酸化・分解していくのです。
しかし、ある程度の量を毎日飲む人なら、生豆にしろ焙煎後の豆、挽いた後の豆にしろ、ある程度はまとめて買うことになります。
ある程度の分量を効率的にまとめてつくりたいと思う人もいるでしょう。
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そこで、ずいぶん前(若い頃)に、アルバイトしていたコーヒー店のマスターのやり方を紹介します。
そのマスターは、早朝、焙煎後の豆を大量に挽きます。
そして、たぶん、長年の経験から割り出した「1日の店の販売量」の大半に相当する分をドリップして、濃縮コーヒー原液をつくるのです。小さい店でしたが、何十リットルにもなります。
それを2リットル以上も入る大きなガラス瓶につめて密封し、冷却してから冷蔵するのです。たぶん、10℃くらいでしょうか。家庭用の冷蔵庫でOKです。
で、必要に応じて、保存した原液を取り出して、湯で薄め、あるいは濃縮ミルクなどで割って撹拌して、来客に提供していました。ただし、保存して利用するのは、せいぜい1日半以内でしたが。
焙煎して挽いてからできるだけ短い時間のうちに淹れて、しかも温度の上昇や揮発を防ぐ方法で、なかなか気の利いた方法です。
もちろん、そのつど、必要量をこまめに淹れてすぐに飲むというのが、一番正しい方法なのですが。