2013年03月01日

17世紀の貴族の飲み方

コーヒーがヨーロッパに伝播・輸入されていく物語は、別の機会に書くつもりですが、そのときの飲み方の1つを推察してみましょう。

ごく稀には、16世紀の初めに北イタリア諸都市の富裕商人によるオリエント貿易をつうじて、アラビア方面からコーヒーが伝わったといいます。これが目立つようになるのは、16世紀末から17世紀にかけての頃です。
コーヒーはアラブ世界では、「カフウァ」とか「カフヴェ」と呼ばれていたそうです。
それがヨーロッパに伝わって、カフェとかカフィー、コーフィーと呼ばれるようになりました。

当時、地中海世界では、貿易競争や軍事的優位をめぐって、北イタリア諸都市のあいだの激しい覇権闘争が繰り広げられていました。
そのなかで、ヨーロッパでコーヒーを飲むことは、地中海世界や都市のなかで自分が圧倒的に成功した有力者・富裕者であることを誇示する行為でした。ヴェネツィアでは富裕商人階層は、都市国家の統治にかかわる貴族でもありました。
彼らにとっては、コーヒーの味がわかって飲んだというよりも、自分の権威を見せつける快感を味わう行為でした。

シナモンナツメグクローブ

そうだとしても、砂糖のような金よりも高価な甘味料を使うことは、考えられなかったでしょう。
そこで、アラビアや中東方面から伝わってきた飲み方を模倣し、工夫して改良した程度の飲み方を生み出しました。
それにしても、砂糖に比べれば安価だとはいえ、コーヒー豆やインド洋の香料(シナモン、クローブ、ナツメグなど)は、カップ1杯の代金が、現代の数万円、数十万円以上にも値する希少品・奢侈品には違いありません。
だからこそ、自分の権力と富の大きさを見せつける手段ともなったわけですが。
香料だけで苦味が消せない場合には、ヨーロッパ原産の蒸留酒(これも高い)や、そこからから抽出したエッセンスを加える工夫をしたようです。
そして、それが、19世紀まで、ヨーロッパの貴族や富裕階級の嗜好、嗜みとなっていきました。
今でも、ヨーロッパの特権階級は、自分の屋敷に雇っている専門家に、そういう香料コーヒーをつくらせて飲んでいるようです。

私たちにとっては鼻もちならない彼らから見ると、現代日本で普及している(ブラックとか砂糖などを加えた)コーヒーの飲み方は、「アメリカナイズされた下賤な卑しい大衆の飲み方」なのだそうです。
そういう評価もあって、また茶の原産地インド東部を支配したこともあって、ブリテンではカフェの代わりに紅茶が上流階級のあいだに普及していきました。

次回の記事では、そういう淹れ方、飲み方を再現してみましょう。



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2013年03月19日

香料を加えて飲む

さて、ヨーロッパでは19世紀になるまでは、砂糖は大変に高価な調味料・甘味料でした。
コーヒー豆がヨーロッパの主だった都市に持ち込まれ、富裕階級や貴族の嗜好品になるのは17世紀前半です。
その頃には、コーヒー豆も非常に高価な奢侈品で、まして砂糖はさらにさらに高価な贅沢品で、重さあたりの取引価格は金と大差がなかったようです。
場合によっては、金の代わりに貨幣として取引に用いられていました。

シナモンナツメグクローブ

◆砂糖を使わずに風味を楽しむ◆

当然のことながら、その頃は、コーヒーの苦みもその芳香とともに風味を楽しむものだったのではないでしょうか。
それでも、大金持ちであれば、苦みを何とかしたいと金を注ぎ込んで、淹れ方や飲み方を検討したことでしょう。とりわけ、アラビアやインド洋、紅海方面の飲食をめぐる「豊かな香料文化」を参考にしたものと考えられます。
そんな飲み方を、ここで再現してみましょう。

ヒントはヨーロッパ、とりわけフランスの有力貴族層のあいだに伝わるとされる飲み方です。
しかし、私たち庶民は、彼らのように大金を注ぎ込むわけにはいきません。

◆香料はシナモン、ナツメグ、クローブなど◆

さて、用意するものは、焙煎して挽いたコーヒー豆、香料としては料理用(パウダーまたは顆粒)のシナモン、クローブ、ナツメグあたりでいいと思います。
要するに、コーヒーを淹れる(ドリップする)とき、またはドリップした直後に香料の風味を溶かし込むのがポイントです。受けボウルに入れておいてもいいです。
ただし、香料の風味は強く刺激的なので、「コーヒー豆の甘い芳香を消したくない」という人は、ドリップしたあとで、少しずつコーヒー液に混ぜて溶かし込んでください。
私の好みは、フィルターに挽いた豆を入れるときに香料を混ぜる方法です。苦味を消す甘い香りを好む人は、シナモンがいいでしょう。あるいは、シナモンとクローブ、ナツメグをどれも少しずつ混ぜる方法もあります。
ただし、日本で普通に出回っているコーヒーを飲みなれている人には、こうして入れたコーヒーは、たぶん「コーヒーではない」と評価されるでしょう。
これは、健康のための薬、あるいは薬用スパイスとしてコーヒーを楽しむ方法ともいえます。

◆さらに加えるもの◆

いずれにせよ、香料を入れることで、コーヒーの苦みはあまり感じなくなるので、砂糖は要りません。このことから、苦味は舌よりも、鼻+舌(つまり鼻腔・口腔全体)で感じていることがわかります。
それでも、嗅覚と味覚が敏感で、苦味が気になるという人は、カカオボール(カカオに砂糖を混ぜて、チョコレートボールにしたもの)を入れてみましょう。
アーモンドパウダーが手に入る人は、それを加えてもいいでしょう。
あるいは、甘みのあるコンデンスミルクやクリームを少し混ぜてもいいでしょう。
まあ、「普通のコーヒー」とは全然違う次元のコーヒーになります。

◆異次元のコーヒーをどうぞ◆

どういう味が気に入るか、いろいろと試してみてください。
それが、18、19世紀のヨーロッパの貴族の嗜みの風味です。たぶん。
私にはまったく縁がありませんが、何千万円もする豪華客船のクルージングの旅をしたとすると、そのカフェやレストランでヨーロッパ風またはアラビア風のカフェがあれば、こういうコーヒーを出してくれるかもしれません。
1杯数千円以上の価格で。

posted by 田舎おやじ at 13:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 飲み方いろいろ | 更新情報をチェックする
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